平成22年度においては、1本の学術論文の出版が研究成果となった。「介護移住の実証分析」(共著)では、介護保険施設への入所を求めて高齢者が移住する介護移住の問題を扱い、都市部を中心に介護移住が起きていることを明らかにした。この論文は、日本経済政策学会が発行している査読付き学術誌『経済政策ジャーナル』に掲載された。日本では社会的入院の解消を目的のひとつとして介護保険制度が導入されたように、医療と介護は密接に関連している。こうした背景を踏まえながら、医療保険のみならず介護保険についても同時に分析を進める必要があるだろう。また、本年度は国内の学会のみならず、国際学会(International Institute of Public Finance)へ出席することもでき、多くの知見を得ることができた。これも本研究費の助成によって可能となったものである。特に、国際学会に出席することによって得られる情報や知見は非常に多いことを体得できたため、次年度は国内学会のみならず国際学会にも積極的に参加したい。今後は多くの国で医療費が増大することが予測され、医療費の発生をどのように抑えるかとともに増大する医療費をどのように賄っていくのかを考えるべき時であるといえよう。本年度は当初の計画の通り、理論的分析の準備作業および実証分析に用いるデータの整備・構築が主たる作業となったが、次年度以降もこうした研究を遂行し、学会報告および学術雑誌への投稿に向けた準備を進めたい。
|