平成23年度においては、1本の学術論文および1本のディスカッションペーパーの刊行が研究成果となった。「介護移住の実証分析」(共著)では、介護保険施設への入所を求めて高齢者が移住する介護移住の問題を扱い、都市部を中心に介護移住が起きていることを明らかにした。日本では社会的入院の解消を目的のひとつとして介護保険制度が導入されたように、医療と介護は密接に関連している。こうした背景を踏まえながら、医療保険のみならず介護保険についても同時に分析を進める必要があるだろう。また、「出生率の決定要因に関する実証分析」では、兄弟姉妹の数といった家庭環境や若年期に居住していた地域環境などが女性の出生率に影響を与えるか否かを検証した。よく知られているように乳幼児期の医療費リスク発生率は高く、出生・育児と医療費との関係は非常に重要な問題である。今後は多くの国で医療費が増大することが予測され、医療費の発生をどのように抑えるかとともに増大する医療費をどのように賄っていくのかを考えるべき時であるといえよう。本年度は当初の計画の通り、実証分析に用いるデータの整備・構築および分析が主たる作業となった。本研究は今年度で終了となるが、引き続きこうした研究を遂行し、学会報告および学術雑誌への投稿に向けた準備を進めたい。
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