本研究では、国際的なライセンシングやアライアンス、直接投資や国際M&Aといった国際取引の市場構造・決定要因を分析し、国際的な制度設計に関する政策インプリケーションを明らかにする事を目的としている。実証分析を主たる分析としている為、データベースの構築を行った。市場シェアデータベース、特許引用データベース、各国制度・法律文献を用い、実証分析の基盤データの構築を行った。これにより、企業レベル、製品レベルデータの分析が可能となった。特許データについては、その取得が完了したため、今後は企業データ、製品レベルデータとの結合を行う事により、イノベーションと市場競争の分析が可能になると考えられる。 分析については、日本の医薬品市場における抗生物質市場シェアデータベースの構築を行い、国際アライアンスの効果の分析を行った。アライアンスの戦略的影響についての検証を行い、アライアンスが効率性に基づく要因によって行われている可能性を明らかにした。また、その際に、日本における医薬品関連の制度・規制について着目し、国内制度と国際取引の関係の分析を行った。国際的な制度の違いに関しては、貿易データを用い、各国の制度の相違と国際取引の関係を分析し、制度の財貿易、直接投資に与える影響を検証した。 多様な国際取引形態の一つである直接投資については、日本の電機産業のアジア進出の決定要因を動学パネル分析を用い明らかにした。直接投資については、自動車産業の海外進出と自動車部品会社の行動を検証する為、海外進出データの取得を行い、実証分析の基礎データを構築した。制度要因の影響を強く受ける金融市場については、日本におけるストック・オプションの分析を行い、企業統治方法として用いられているか否か、その決定要因を検証した。
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