研究概要 |
家庭ごみの有料化を導入すると,ごみの減量効果が認められるものの,数年経つとごみが増加傾向になるとの報告がされるようになった(田中他,1996など),それはリバウンドと呼ばれている.本研究では他の要因を除いたとしてもなお,何らかの原因で有料化導入後の減量効果が失われることをリバウンドと呼ぶことにする.その効果を検出するためには他の要因を注意深く取り除く必要性がある.たとえばある自治体で有料化導入後に,住民の平均所得が増加したとすると,ごみ排出量が増加しているように見えるかもしれないが,これは純粋なリバウンドではない.そのため減量効果のリバウンドを抑えるために対策をとるようになった(山谷,2007,pp.18). このような前提でリバウンド効果の有無について明らかにした研究はまだ無いが,Yamakawa and Ueta (2002)が有料化の持続性に関して,日本の自治体クロスセクションデータによる検証を行っている.その結果,減量効果は10年以上持続することが明らかになったが,リバウンドしているかどうかは検証できていない。 以上の先行研究をふまえた上で,リバウンドが起こる仮説としていくつか考えられる.1)料金への慣れ;市民がごみ有料化の料金へ年数が経つにしたがって慣れてくるというもの2)過剰圧縮仮説;有料化導入後に指定袋の使用を節約するために可能な限りごみを詰め込む人々が年々増大していき,その結果自治体全体のごみ量が増大してしまうというもの3)事業系ごみ不法混入;市民の側ではなく事業系ごみの混入による見かけ上のリバウンドの可能性.以上3つの仮説を多角的なアプローチによってリバウンド効果の実態を検証する. 2年目は,家庭ごみ有料化の減量効果,および資源ごみの代替促進効果の長期での持続性を明らかにするために,計量経済学の多変量サンプルセレクションモデルを用いて検証し,国際会議等で報告した.
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