研究課題
第一に、複数の流通チャネルの間で競争が行なわれている状況において、生産者と小売業者の行動を3段階ゲームとして定式化し、生産者が均衡においてテリトリー制を選択することを示した。さらに、テリトリー制が経済厚生に及ぼす効果について検討を行った。テリトリー制の導入は、無駄な輸送を排除することによってチャネル(またはフランチャイズ料を徴収する生産者)の利潤を増加させると同時に、消費者厚生をも向上させるという意味で、パレート改善となる。第二に、消費の外部性が存在する下で第三級の価格差別が経済厚生に及ぼす効果について検討を行った。すると、十分に現実的な想定のもとで、需要の価格弾力性の小さな消費者に対し、価格を引き下げるという結果が得られた。すなわち、他の消費者の需要量を増加させるような消費の外部性が存在する場合、通常の価格差別の結果とは異なる可能性が示唆された。さらに、このような価格差別により、生産者余剰のみならず、消費者余剰も増加させる可能性のあることが明らかとなった。第三に、垂直的製品差別化の存在する下で第三級の価格差別が経済厚生に及ぼす効果について検討を行った。すると価格差別によりもたらされた企業利潤の増加が品質の向上を促し、価格差別が企業のみならず、消費者余剰の改善にもつながりうることが明らかとなった。このことは、財の品質選択が可能な長期においては、価格差別が全ての消費者グループにとっての利益となりうることを示しており、価格差別の新たな可能性が明らかにされた。排他的テリトリーや価格差別は公正取引委員会による取り締まりの対象となる行為である。これらが持つ経済効果を明らかにすることにより、生産者余剰、消費者余剰、そして経済厚生を高めるための政策を構築する一助となることは間違いのないことであると考える。
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Economics Letters Vol.106, No.1
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経済研究 第60巻第2号
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