研究課題
ジョブ・マッチングの質には空間的なばらつきが大きく、求職・求人特性のみならず、求人・求職方法によってその質が大きく異なることが知られている。そこではジョブ・マッチングの質の決定には、近隣の私的仲介者を通じた非市場的取引が大きな役割を果たすことが明らかにされてきた。こうした市場取引と非市場取引の混在は発展途上国で広く観察され政策的な関心を集めつつある。特に発展途上国の労働市場構造に関する制度設計的議論を進める上では、市場取引と非市場的取引の代替関係・補完性を深く理解し、「失業から就業へ」の求職者が(1)どの経路を通じて労働技能を蓄積し、(2)どの求職者によってジョブ・ネットワークが形成され、(3)形成されたジョブ・ネットワークの質と地理的範囲がどの程度かといった点に関する細かい知識が必要であろう。本年度は研究最終年にあたり、モデル分析が持つ含意の検証を行った。これまで、ジョブ・ネットワークを介して求職者と求人企業双方の情報が比較的完全に近い非市場的取引から、規模が大きく匿名性のある市場取引へと移行するタイミングにおいて、どのように賃金が決定されるのかを理論的に考察してきた。タイ、インドネシアを中心とした産業高度化に関する企業レベルの調査を行うことで、賃金決定や労働需要の決定に関する情報を収集し、労働供給側のデータと組み合わせて実証分析を進め、その成果の一部は学会や学術誌で発表されつつある。標準的な理論モデルではこれまで賃金決定の部分で交渉によるものや、求人側が特定の賃金提示を行うものなど、得られる賃金決定式は極めて多様であることが知られている。産業の構造転換に伴う失業から就業への移行を促すような政策プログラムの検討に際し、今後基盤となる情報を提供する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
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