当初より実施している特許書誌情報データでの出願人名に対する同名企業や表記揺れを統一するための名寄せ作業を完了させた。具体的な手順として、合併や社名変更に伴う企業名の変遷を調査し、それらに該当する出願人をサーチした後、本社等の所在地住所データを用いて、同名企業を排除するという作業を目視で実施した。また、名寄せの精度を確認するために、公表されている特許書誌情報データベースでの出願人別特許件数と比較し、統計的に精度の信頼性を確認した。その結果、名寄せ作業の実施企業のうち、6割程度の企業で統計的に信頼できる精度であるという結果を得た。この結果は、一方で、出願人名の名寄せ精度の確保が非常に困難であることも明らかになったと思われる。本内容については、ディスカッションペーパーにまとめている。また、他研究者が利用できるように、名寄せ結果についてもインターネット上に公開している。 企業研究者の分析については、名寄せデータの結果を用いて、発明者レベルの発明ライフサイクルに関する分析を行っている。現時点では、(1)学歴が高くなるにつれて、生涯を通じての発明生産性も高まる、(2)発明生産性は経験に対して逆U字型の傾向が見られる、(3)博士課程を経る等の高学歴化による就業機会の遅延がもたらす潜在的な生産のロスは、就業後早期に解消される、等のことが明らかとなってきている。この結果は、大卒等による企業内訓練よりも博士課程を経る方が生涯にわたり高い生産性を維持することを示しており、企業のイノベーション活動の面においても、博士課程出身者の増加はプラスの影響をもたらす可能性を示唆している。
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