研究概要 |
本課題の目的はネットワークレベルで航空旅客市場を扱い,航空輸送の市場特性を十分に検討した上で、航空政策や空港整備の効果を実証的に検討することである. 本年度は,2005年度の都府県及び北海道4ゾーンの50ゾーン間の純流動等のデータを利用して,先行研究で指摘される輸送密度の経済性を考慮した枠組みの下で国内航空旅客市場について需給曲線を同時推定した.推定の結果,供給側の輸送密度の経済性についてはその存在が統計的に有意な結果として確認され,航空旅客市場を分析する上で当該経済性を考慮することの重要性を示した.限界費用関数で考慮される羽田や伊丹/関空,新千歳など主要空港ダミー変数の係数は正の場合が多く,主要空港は地方管理空港に比べて相対的に空港使用料の高さや混雑などが反映された結果である可能性を指摘した. 輪送密度の経済性は米国内市場での規制緩和後のネットワーク再編に重要な役割を果たしたことが先行研究で指摘されており,日本においても今後の航空市場分析において考慮することの重要性が確認された. 上記成果に基づき,規制緩和直後の2000年度と2005年度の結果を比較することで,航空旅客市場の規制緩和がそれぞれの都市ペア市場の社会的厚生にどのような影響を与えたかについて分析を行い,その成果をとりまとめている途中である. なお,上記で利用している分析の枠組みでは,データ作成段階で大都市圏では各種データの集約が必要であり,本課題の目的の一つである空港整備効果の検討は難しいことがわかった.そこで,よりデータを細分化した生活圏レベルでの分析の準備を進めているところである.
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