研究課題
少子高齢化が進む日本では、引退世代を支える現役世代の負担が大きくなる一方である。高齢者の引退時点において、その家計の資産蓄積が十分かどうかは現役世代の負担に大きな影響を与える。資産蓄積が金融計画(financial planning)についての態度と選好パラメーター(時間割引率、危険回避度、遺産動機、予備的動機)にどの程度影響を受けるのかについて、日本のマイクロデータを用いて実証的に明らかにした。得られた結果は次の通りである。OLSの推定結果からは、金融計画のひとつである貯蓄計画を立てることと資産の関係は統計的に有意であるが小さいことが確認されたが、内生性によるバイアスを除去するための2SLSによる推定値はOLSの推定値と比べてかなり大きくなることが確認された。因果関係の意味で、貯蓄計画は資産蓄積に十分大きな影響を与えるということである。さらに、回答者本人が家計における資産蓄積の意思決定に強く影響を与えると考えられるサンプルに限定した分析でも貯蓄計画が資産蓄積に有意に正の影響を与え、貯蓄計画の重要性が確かめられた。これらの結果は、米国の研究結果と整合的であり、日本においても個人の計画行動の違いが家計の資産蓄積の差を説明する重要な要因であることを示している。現役世代の負担を軽減する他の方法としては、高齢者の就業を政策的に促進することが考えられる。税制などにより高齢者の労働供給をどの程度促すことができるのかを知るために、高齢者の労働供給(労働力参加)の賃金弾力性を推定することは重要である。非労働力化している高齢者についての労働力参加の賃金弾力性を仮想質問により計測し、個人ごとに得られる弾力性の値と各個人の属性との関係についての検証については、現在、進行中である。
すべて 2010 その他
すべて 雑誌論文 (1件) 備考 (1件)
The Japanese Economy
巻: Vol.37, No.3. ページ: 62-73
http://research-db.ritsumei.ac.jp/Profiles/70/0006941/profile.html