(1)データ・ベースの構築とモデルの検討 昨年度と同様に、エネルギーと農産物の価格変動や取引量といったデータを更新しこれまでに構築してきたデータ・ベースに追加した。あわせて、これまでGTAPバージョン6に基づいて応用一般均衡モデルを構築してきたものを、GTAPバージョン7.1ベースのものに更新し、最新の経済情勢を描写できるようにした。 (2)応用一般均衡モデルに関する包括的な解説書の刊行 応用一般均衡モデルの理論的枠組みの構築と内容の整理、プログラム上の運用、および、政策シミュレーションへの適用といった点についての書籍をパルグレイブ=マクミラン社から6月に刊行した。刊行直後から、この種のシミュレーション分析の専門家やそれに興味を持つ実務家からの好意的なフィードバックを得たことから、計画したとおりの成果を上げられたものと思われる。 (3)コメ輸入自由化問題に関する政策分析の実施 日本のコメ輸入自由化政策と、コメの供給不足問題の間の関係について、上記の応用一般均衡モデルを用いてモンテカルロ・シミュレーション分析を行ない、その分析内容を英文学術誌に投稿した。査読の結果、掲載されることが決定された。 (4)中国経済の所得格差分析 中国における税制改革の所得格差への影響を分析するために、応用一般均衡モデルと、それに接続できるマイクロ・シミュレーション・モデルを構築した。中国国内の31省市、および、都市・農村別の家計モデルを作成し、それらにおける支出行動の変化と経済厚生の変化をとらえようとするものである。具体的な税制の詳細や家計間の所得移転等のデータを収集中であり、現時点ではそれらを省略したプロトタイプ・モデルとなっている。
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