研究課題
農産物の生産性に関して不確実性が存在する。その不確実性がマクロ経済や経済厚生に与える影響についてモンテカルロ-シミュレーションの手法と世界貿易応用一般均衡モデルを用いて分析した。その結果、日本やそのほかの国々においてコメの生産性が様々に変化したとしても、輸入自由化政策が日本にとってメリットがある政策であることには変わりなく、むしろ、輸入自由化がコメの供給安定度を高めることが示された。同時に、コメの供給安定のための在庫はコスト面でメリットはないことも示された。最後に、対日主要コメ輸出国であるアメリカ、オーストラリア、中国、タイの4ヵ国が何らかの理由で禁輸を行った場合を検討し、数年に一度の高い頻度で禁輸が発生しない限り、そのデメリットはコメの輸入自由化のメリットを超えないことが示された。このコメ市場に関する分析の成果は、Food Policyにおいて刊行された。同様の手法を用いた分析を、コメ以外の他の主要作物、すなわち、小麦、トウモロコシ、大豆についても行い、その研究成果に関する草稿を作成した。電力市場に関する分析では、原子力発電所がすべて停止した場合と、それによって不足する供給力を補うためにガスタービン複合火力発電所を同じ設備容量だけ導入した場合を考え、9地域の空間均衡モデルを用いてそれらの電力価格や需給、および、地域間送電網の混雑度合いに与える影響を検討した。原子力発電所の脱落は電力価格を2-3円/kWh程度引き上げる。代替電源の導入は、この価格上昇の抑制できるが、それでも1-2円/kWh程度の価格上昇は避けられない。また、原子力発電所の脱落によって、各地域で安価な電源が不足するようになり、一方で、ピーク電源であるガスタービン複合火力発電所が導入されることで、地域間の送電量は大きく縮小する。すなわち、代替電源を導入する限り地域間送電網を強化する必要は無いことが言える。
2: おおむね順調に進展している
研究の柾は主に2つであり、ひとつは、応用一般均衡モデルを用いたシミュレーション分析。いまひとつは、空間均衡モデルを用いた電力市場分析である。前者については、すでに英文学術雑誌に成果を刊行でき、また、後者についても、草稿が完成し、内閣府社会経済研究所や経済産業研究初等での研究報告を行ない、それぞれ当初計画した通りの進捗を見せている。
第一に食料安全保障問題に関して、コメ以外の主要農作物市場における各欄要因を分析した研究成果を刊行することを目指す。また、そのために平成24年度においてこの研究に関する学会報告を行う予定にしている。第二に、日本の電力市場に関して、原子力発電所の脱落とその代替電源の導入の影響についての空間均衡分析の研究を完成させてこの成果を刊行することを目指す。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
Review of Urban & Regional Development Studies
巻: Vol.23 Issue2-3 ページ: 114-136
doi:10.1111/j.1467-940X.2011.00180.x
GRIPS Discussion Paper
巻: 11-16 ページ: 1-32
http://r-center.grips.ac.jp/JPDiscussionPapersDetails/232/
Food Policy
巻: 36(3) ページ: 368-377
10.1016/j.foodpol.2011.01.002