研究課題「ヨーロッパにおける経済統合プロセスの深化と賃金・生産性・労働移動の実証分析」について、平成21年度の計画では、Eurostatのミクロデータを購入し、分析を進める予定であった。しかし、Eurostatからのデータ購入が却下されたため、その予算をドイツ・フライブルグ大学への渡航費(2回目:平成22年1月)に充てた。これを踏まえ、平成21年度は以下の研究活動を実施した。 1) 学会への参加と専門家との意見交換 学会(日本EU学会、日本経済政策学会)やEUインスティテュート関西のイベントに参加し、本件に関する研究報告を聞き、また、専門家との意見交換を行った。さらに、平成21年8月と平成22年1月に、ドイツ・フライブルグ大学経済学部のラントマン教授を訪問し、本件に関するヨーロッパでの研究動向と現在進めている研究内容についての意見交換を行った。これにより、本研究分野の最先端の動向を理解し、本研究の意義を明確化することができた。 2) 「経済統合プロセスの深化と労働移動の推移」の分析 本件に関するヨーロッパの議論において最も重要な課題の一つが本件分析である。その理由は、これまでの手法では本件に関する実証分析が難しく、理論やデータも整理されていないことがあげられる。これを踏まえ、本件に関する参考文献の整理と理論的なアプローチをまとめ、平成21年11月14日、金沢大学で開催された日本経済政策学会第43回中部地方大会にて、「ヨーロッパの経済統合と労働市場への効果」を報告した。 上記の1)2)を踏まえ、経済統合プロセスの深化と労働市場への効果についての分析を進める中で、経済統合による各国産業構造への効果が重要な役割を果たすことが明らかになった。平成22年度は、本件について生産性や賃金などを含めた研究を進めていく予定である。
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