ヨーロッパの経済統合プロセスの深化により、財と資本の域内移動は自由化されその移動は活性化されたが、労働はほとんど移動しなかった。これにより、理論的な経済統合域内の均衡化が導き出されないこととなり、これまでにない経済成長過程を見せる国や国家間での不均衡が見られることがわかった。 古典的な理論による経済統合の効果を紹介し、理論上では完全競争市場においては域内で全ての経済指標が均衡状態に収敷することを確認した。この完全競争市場のメカニズムを基に、Eurostatの統計データを使ってヨーロッパの経済統合においてどのようなことが起こったのか、検証を進めた。また、Petty-Clark'Lawを使って、経済統合によって各国の労働市場にどのような効果が表れているのかを考察した。 2000年以前からヨーロッパの経済統合に参加している西側諸国は、ほとんどが「成熟安定期」に到達しており、またそれ以外の4か国も全て成熟期から成熟安定期への移行段階に入っていることがわかった。それに対して、東欧諸国のほとんどの国は、成熟期に達していない。その中でも注目すべきは、「発展期」と「その他」に属している8か国である。これらの国々では、1998年から2008年までに農業分野における労働人口の割合が急激に減少している。特に、EUに加盟している27カ国の労働人口における産業構造を時系列でみると、2004年以降、強い力でサービス産業における労働人口の増加が起こっていることが確認された。また、ラトビア、リトアニア、ルーマニアでは、農業の労働人口が急激に減少し、工業の従事者が増加するよりもさらに強い増加がサービス産業で起こっていることがわかった。
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