研究概要 |
今年度は,経済実験を京都産業大学において4回行った.実験では被験者に対して,高い利得を得るためには罰金がかかるリスクが伴うような選択肢を与えた実験を行った.この実験デザインは,過去に行った研究("Group Size Effects on Cartel Formation and the Enforcement Power of Leniency Programs," International Journal of Industrial Organization, vol.27, pp.145-165, 2009)を改良したものでる.実験のゲームの内容は,2人が協調しあうことによって高い利得がもたらされるような囚人のジレンマゲームを扱い,そのような協調状態に対して確率的に罰金が課される場合に,個人の罰金に対する態度が,グループで意思決定する場合に,どのように影響しているかを検証した.グループ問の意思決定は,事前にパートナーを相談できるかどうかで,実験結果が大きく異なりうる.よって,2人ゲームの意思決定を行う前に,2人の間で相談できるような状況を作り,相談が人々の罰金のリスクに対する態度にどのように影響を及ぼすかを調べた.さらに,課徴金減免制度の効果についても調べた.本研究の目的は,金銭的なペナルティが,人々が法令を遵守するために,どの程度効果的であるかを実験経済学の手法を用いて検証することである.今年度の実験の結果は,データが少ない段階ではあるが,罰金などのペナルティは,課徴金減免制度のような罰金を免除する制度の導入によって,被験者の反応の大きさは敏感に異なることがわかった.ただし,反応の大きさは,個々人で一様ではなく,被験者集団によって異なる可能性があることが分かった.
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