研究概要 |
本年度は前年度に引き続き,被験者に対して高い利得を得るためには罰金がかかるリスクが伴うような選択肢を与え,安全な(罰金がかからない)選択肢を選ぶか,リスキーな(罰金がかかるリスクがあるが期待利得は安全な選択肢よりも高い)選択肢を選ぶかを実験で観察した. 基礎とする理論モデルは,2人ゲームの繰り返しゲームの実験であり,2人が協調しあうことによって高い利得がもたらされるような囚人のジレンマゲームを扱った.そのゲームの協力状態に対して確率的に罰金が課された. 被験者は,誰が自分のペアかはわからないが,実験中の1つの繰り返しゲームの間は,同じペアとプレーしていることが約束された.そして,ペアの相手とだけ,コンピュータ上でチャットができるようにし,自由に談合の相談を行うことができるようにした.このような相談の機会を設けることは,理論的にはコミュニケーション(チープトーク)が,協力的な均衡へ導くための強い誘因になりうるかどうかを調べることであった.ペアによって差はあるものの,コミュニケーションの内容は,高価格を維持することを約束するものであり,コミュニケーションが上手くいっているペアの多くは,長期間高い価格維持に成功していた. 実験では,談合の事実を自白することによって罰金が免除されるリーニエンシー制度についても検証した.結果は,価格維持に成功したペアでも,相手の内部告発のリスクを高く見積もるために,結局は内都告発を行って,談合の安定性が大きく崩れることが観察された.
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