国有企業改革の進展については、それ以前の「単位」が一元的に中間集団の位置を独占していた状態が解体され、「単位」が抱え込んでいた経済(生産)機能が強化された一方、政治行政(支配)機能は縮小し、社会的機能は別組織へ移されたととらえることができる。まず市場経済化により、経済組織が量的に急増し、多様化した。従来は、「全民所有制(国有)」「集団所有制」「その他」しか存在しなかった。これに対して、「国有企業」「集団所有制企業」「株式合作企業」「聯営企業」「有限責任会社」「株式有限会社」「私営企業」「外資系企業」と多様な所有形態が出現している。政治行政的な中間集団をみると、共産党組織が改革以降も独占的な地位を保っている。中国では共産党の一党独裁体制が続き、党組織があらゆる職場に張り巡らされているという構造は不変である。そして国有企業改革によってもっとも大きく変化したのは社会的領域である。改革以前、「単位」は人々にとって唯一の所属集団であった。企業集団であるばかりでなく、コミュニティーであり、あらゆる意味でのアソシエーションであった。しかし、現在、こうした意味での「単位」集団は消滅している。国有企業は「単位」から企業へと変貌をとげたということになろう。 たしかに賃金の固定給化が進み、福利厚生の社会化・商品化が進むなかで、企業が労働者やその家族の生活を保証するという「単位」としての側面は薄れてきている。けれども国有企業は、社会保険以外の負担にけっして後ろ向きではない。さらに、もっとも「単位」とは縁遠いと考えられる「外資系企業」においてでさえも、生活にかんする手当や政策性の強い手当が数多くみられる。 こうした事実をふまえて、国有企業を中心とした「単位」が果たしてきた機能を「社区」がとってかわるということでいいのか、企業が果たすべき役割をどのようにとらえるべきか、を検討することをつうじて「社会主義市場経済」社会を考察すべきことを主張した。
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