研究概要 |
東アジアにおける通貨危機や,近年の為替の変動を背景に,通貨市場の政策分析の意義が高まっているが,為替レートの合理的水準に関する分析は十分とは言えない.本稿では,特に東アジアを中心に,適切な為替レートの水準に関する定量分析および,適切な通貨制度の分析を行う.パネルデータを用いた分析を行う点,及び,為替レートに関する定量分析に基づいた政策提言を行う点に,本研究の特色と意義がある.また、金融政策を理解する上では、貯蓄率や年金制度に着目することも重要である。一方、近年高齢者世代を支える方法が各国で重要な課題になっているが、世代間の相互扶助については十分な分析が行われていない。しかしこの相互扶助は、一刻の貯蓄率や年金制度を考える上で、大変重要な役割を果たしている。この観点から、世代間移転の大きさを推計する研究も同時に行う。 世代間移転の大きさを推計する研究"Heterogeneous elderly parents and Intergenerational transfers in Japan"は書籍The Family, the Market or the State?: Intergenerational Support Under Pressure in Ageing Societies (Springer-Verlag; 2012)の1章として出版されることになった。今後、利用可能なデータを入手することができれば、この研究を他の東アジアの国に拡大して、比較研究を行うことも検討している。また日本についても同様のデータを用いながら、今後推計を一層精緻化する研究も続けたいと考えている。 為替のMisalignmentに関する研究、"Are the East Asian Currencies Still Misaligned? An Analysis Based on Absolute PPP-Income Relationship Using Panel Data"については、論文の問題設定を大きく変更する予定はないが、今後モデルの設定やデータ分析手法を見直して修正を加えたたうえで、新たな投稿先を検討する予定である。
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