生活保護基準が生活保護受給世帯の稼働率に与える影響を分析した。生活保護制度においては、自立による生活保護からの脱却を目指されていながら、生活保護基準と稼働率についての研究はほとんど行われてこなかった。本研究では、『社会福祉行政報告例』を用いて76自治体を対象とし、1997年から2009年までを分析期間として推定を行った。誤差項が生活保護基準と相関している可能性、時間を通じて変化しない観測されない効果を考慮して固定効果操作変数法で推定した結果、生活保護基準は稼働率に影響を与えていないことが示された。頑健性を確認するために、個票データを用いて社会保障を主な収入としている個人の就労確率を推定したところ、社会保障を受けているか否かは就労確率に影響を与えていないことが示された。
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