本研究課題により、マクロ経済が比較的安定していた金融危機発生以前の2000年代のアジア諸国における通貨代替の進展は限定的であること、通貨代替には「ラチェット効果」は観察されないものの、「履歴効果」は存在することが示された。これは、近年、アジア諸国においては、インフレ率が安定的であることに拠っているものである。さらに、インフレ率が安定化している現在においても、依然として通貨代替の程度が高い水準にあるのは、いわゆる「履歴効果」に拠るものである。これらの結果は、アジア諸国において最適な為替相場制度を選択する際には、通貨当局は通貨代替の存在を考慮しなければならないことを意味する。
|