研究概要 |
本研究計画に基づき、2009年度には以下の成果をあげた。 1. 2009年12月12日-14日の日程で開催された「シャウプ使節団来日60周年記念国際コンファランス(於横浜国立大学、慶應義塾大学)」をオーガナイズし、自身の研究報告も含め、内外の研究者15名による国際会議を開催した。同コンファランスの内容は英語の著作として2011年度前半に公刊の予定である。 2. 日本において増税が困難な理由の一つとして、ISSPのデータを用いて明らかになった社会的信頼度、政府への信頼度の低さに着目し、公共サービスの内容が人びとの信頼に与える影響について研究を進めた。ノルウェーにおいて、トロムソ大学のAndreas Varheim教授とソーシャルキャピタルと日本の財政赤字に関する研究打ち合わせ、ワークショップ(Taxes, Globalization and the Evolution of Modern States, University of Tromso, Norway)への参加を行い、同教授の来日を待って、公共サービスについての共同調査を鳥取市で行った。 3. EUIのSven Steinmo教授と共著で日本戦後税制史の歩みが人びとの政府への信頼に与えた影響についての論文を執筆し、これをCambridge University Pressより公刊された単行本に掲載した。 以上の成果を通じて、日本の財政赤字の原因が過大な歳出だけではなく、財政運営をめぐる戦前から占領期にかけての社会学習のあり方や、公的需要を充足するための財政システムの諸特徴によって、増税が困難となった事実にも求められることが示された。これらの事実は2010年度において国際学会での報告、海外での資料収集、英語論文の公刊というかたちで、より歴史実証的に深められるであろう。
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