平成21年度は、フリーバンキング論批判の見地から黎明期アメリカ・インディアナの銀行制度の実態について探り、地方分権性と中央集権性とが混交した現行のアメリカ中央銀行制度のルーツにどう繋がってゆくのかを明確にすることが研究の目的であった。この目的を遂行するため、以下2点の研究実施計画を立てた。1つ目の計画は、黎明期インディアナの銀行制度の実態を(1)生成期(1814-1832年)、(2)発展期(1833-1842年)、(3)衰退期(1842-1858年)の3段階に分け、各段階の内実を、州銀行監督委員会報告書や各種統計、当時の経済雑誌の掲載記事など一次・二次資料等について、国内外の研究施設等で渉猟・摂取しつつ明らかにすることであった。2つ目の計画は、世界の論壇で絶えず進展を遂げているフリーバンキング論をめぐる最新の理論的研究の到達状況をおさえ、その問題点を分析することにあった。これに対して、今年度の研究実績は、1つ目の計画については、(1)生成期に続いて、(2)発展期の実態分析までについて、資料蒐集・解析のうえ論稿にまとめ発表することができた。特に(2)発展期の実態解析によって、広大な国土を複数の地区に分けたうえで各地区の信用秩序が独自に統轄されながら、各地区の代表が合議で金融政策をマクロベースで展開するという、現在のアメリカ中央銀行制度の特性に連なる独特の銀行間組織が州単位で形成されていたことと、その独特な銀行間組織が当時の景気の大きなうねりにどう翻弄されどう乗り越えたのかについて明ちかにすることができた。ただしこの論稿の作成に研究時間の大半を費やさざるをえなかったため、2つ目の計画については、予定の3分の1程度の進捗に留まった。今年度では留保せざるをえなかった、1つ目の計画の(3)衰退期の分析とその成果公表、2つ目の計画である世界のフリーバンキング論の最新状況とその問題点の完全掌握については、次年度以降の課題として引き続き研鑽を進めてゆくこととしたい。
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