本研究は研究代表者がこれまで行ってきたシミューションモデルに世代数と世代内格差による拡張を行うことで、世代間と政策決定時点の世代内の所得構造との対応関係を定量的に評価する事を目的としている。 シミュレーションで世代の拡張をする際に、プログラムを簡便に処理できるよう、モデル構造はそのままにスクリプトの大幅な書き換えを行った。これにより、20歳未満および100歳以上のモデリングが容易に行えるようになった。ただ、変数の急激な増大により、当初予想されていたシミュレーションが若干不安定になるなどの問題が発生し、今後整備しながら安定化する。 つぎに、上述のシミュレーションモデルで、人的資本を考慮した所得格差を導入する形でモデルの拡張を行った。所得格差を導入した初期的なモデルは9月に紀要論文として発表し、財政再建先送りが低生産現役世代のみに便益をもたらすこと、財政再建の際に公共投資を用いることは減税に比べ、低生産現役世代の便益ではなく他の世代の負担を軽減するのに役立つ、などの結果を得た。これは世代間の問題に関わる財政再建やその先送りが、世代内の格差と対応関係にあることを示すもので、本研究の動機である世代間と世代内の格差の関係性を定量化する目的に、対応しそいる。 並行的して、人的資本に関する関連文献を調査し、人的資本のデータ整備を行った。今後教育面を考慮したモデリングを一層進めながら、整備された人的資本データを組み込む作業を進めて行く。日本における人的資本データは必ずしも十分整備できているとはいえないので、今後の改善も含めて進めて行き、公表なども含めて行ってゆく。
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