本年度は研究最終年度として研究計画に従い、所得格差と再分配を明示したモデルの改善を試みた。主に、本年度は作成されたシミュレーションモデルの更なる検討と主にシナリオ分析による様々な評価が主な目的となった。 そこで、構築されたシミュレーションモデルの数量的評価を多方面から行い、(1)やはり生産性の上昇は全所得階層、全世代に望ましい影響をあたえること、(2)政府債務発行による減税や世代間格差の改善はごく一部の限定された世代の厚生しか改善せず、他の世代は悪化させることが様々な環境下でも確認された。また、(3)一時的な人口増加がそれ以前の世代の厚生を大きく改善させるが、以後の世代はおおむね厚生を悪化し、将来世代でもわすかな世代の厚牛が改善する点については、特に将来世代の便益については、人口増加の規模や外生変数の値によって変化しうる事がわかり、人口動態が世代間に複雑な影響を与える可能性を示唆した。 また、世代内の格差調整が世代間に公債や遺産となって現れる場合にも、将来世代の格差がわずかに縮減するだけで、高所得・低所得世代の全体的な負担はほぼ並行していた。そのため、世代内格差の是正は、結果的に世代間にはほぼ均等に将来負担となって現れる可能性が高く、現役世代の格差是正が将世代の格差是正に直接つながるよりも、現役世代への再分配が大きくなってしまう可能性か高いことがわかった。これらの結果を日本財政学会にて学会報告した。
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