現役世代が自身の世代内の短期的な経済格差を是正するために公債を通じた所得移転政策を行う際の、現役世代と将来世代に与える帰結をシミュレーション分析により評価した。シミュレーション結果からは、政府債務発行による減税や実質的な所得移転による世代間格差の改善は現役世代の限られた一部の限定された世代の厚生しか改善せず、他の世代は悪化させる事がわかった。また、一時的な人口増加がそれ以前の世代の厚生を大きく改善させるに留まる。さらに、現役世代内の格差是正が将来世代内の格差是正に寄与するか評価した結果、現役世代内の格差是正は将来世代内の格差をわずかに縮減させるだけで、世代間の格差を改善するには至らない。そのため、世代内格差の是正は、結果的に世代間にはほぼ均等に将来負担となって現れる可能性が高く、現役世代の格差是正が将来世代の格差是正に直接つながるよりも、単に現役世代への再分配が大きくなっている可能性が高いことがわかった。
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