本研究の目的は、日本の企業統治改/革の有効性について、特に「取締役会」の機能に注目した分析を行うことである。その意味で、主に三点の視点に合わせた分析を行った。一点目の研究課題では、先行研究の少ない「銀行業」の企業統治ついての研究を行った。この研究では、取締役会の機能として、企業統治改革以降にその有効性を前提として導入された「独立取締役」の有効性に注目した検証を行った。特に、取締役会の機能と業績指標の間には、Helmalin and Weisbach(2003)を始めとする数多くの先行研究で知られる内生性の問題が存在する可能性が高いことから、その問題を緩和する目的でGMM推定を用いた検証を行い、「取締役会規模」は、公的資金投入銀行においては業績を向上させる効果を有しており、公的資金投入行の企業統治改革が適切に機能していることを示唆する結果を得た。一方で、「独立取締役」の機能は日本の銀行業では十分に確認されなかった。 二点目の研究課題では、「取締役会」の経営者に対する重要な規律付け機能としての「経営者報酬」に関する実証分析を行った。この研究では、(1)経営者報酬データの現状と研究についての展望と(2)伝統的な企業統治メカニズムである「銀行持株」・「銀行派遣役員」等の経営者報酬に与える効果についての実証研究を実施した。 最後に、三点目の研究課題として、市場透明性を高めるという証券市場改革が、真に証券市場に有益であり、「市場流動性」を高める効果を有していたかの実証研究を行った。この研究では、市場透明性を高める東証の改革が行われた前後の期間における「市場流動性」の効果を検証するために、マーケットマイクロストラクチャーのイベントスタディーの手法を用いて検証を行った。『結果として、証券市場の透明性が高まった結果、「市場流動性」が高まったことを明らかにした。
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