2009年度は、アメリカの連邦補助金における、連邦政府からの義務付けと州政府側の裁量性の実態、及び州政府下の地方政府や民間部門との関係を検討するために、連邦補助金の中でも州政府側の裁量性が大きいとされるブロック補助金に注目し、その実態と制度的工夫を検討すべく、Child Care関連のブロック補助金の事例を研究した。 4月から8月にかけて、連邦議会の公聴会資料、連邦会計検査院(GAO)やCRSの報告書により、アメリカの連邦補助金とChild Care政策に関する基礎的な情報の収集を行い、9月にワシントンD.Cとバージニア州での調査を実施した。アメリカでは、第1に、アメリカの政府間関係の専門家であるジョージメイソン大学のT.コンラン教授と面会し、今後の研究への有意義な示唆を受けた。第2に、滞在中、連邦議会上院の財政委員会において医療保険改革に関する有力法案が提出されたことから、その公聴会等での情報収集を行った。これは、2010年度以降に特定補助金の最大項目であるメディケイド補助金を研究予定であることから、その準備の一環として行った。 以上の研究からは、第1に、アメリカのChild Careブロック補助金における、受給資格、給付水準等に関する幅広い裁量性が州政府と、各州が展開する多様な政策の姿が明らかとなった。第2に、アメリカではブロック補助金だけではなく、特定補助金についても、日本からみれば極めて緩やかな枠組みの制度が作られている可能性があらわれた。これは、2010年度以降の研究の重要な分析視角と位置付けている。2009年度の研究成果については、財団法人自治総合センターのワークショップにて報告を行い、専門家からのコメントを受けた。そして2010年度6月には、地方財政学会(於青山学院大学)において報告し、学会誌等の学術雑誌への投稿を行う予定である。
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