本研究では、アメリカの連邦制における長期的な集権化トレンドと、伝統的に存在する分権的な基本構造との相互関係を検討するために、アメリカの連邦補助プログラムにおける連邦政府の義務付けと州政府側の裁量性の実態を研究している。その一環として、2010年度は、以下の3つの取り組みを行った。第1に、2009年度から行ってきたChild Care関連のブロック補助金について、その成果の最終的なまとめと公表を行った。具体的には、地方財政学会(於青山学院大学)における報告と、当該学会の学会誌への投稿を行った(掲載決定済み)。 第2に、アメリカのChild care政策における州レベルでの政策の調査と、日米の保育補助政策の比較研究に関して専門家と意見交換を行うために、8月にニューヨーク州とワシントンD.C、バージニア州を訪問した。ニューヨーク州では、資料収集と共に、政策現場となる児童福祉のNPOを訪問し、ケースワーカーへのヒアリングを行った。ワシントンD.C及びバージニア州では、National Conference of State Legislatures(全米の州議会議員の団体)へのヒアリングを行った。そして、Child care政策の専門家であるジョージタウン大学のW.Gormley教授、アメリカの政府間関係の専門家であるジョージメイソン大学のT.Conlan教授およびS.Edner教授に面会し、日米の保育補助政策について意見交を行った。これらの成果は、2011年度中に学術論文として公表予定である。 第3に、アメリカの連邦補助金のうち最大の特定補助金であるメディケイドと、それに付随する低所得児童向けの医療補助プログラムのSCHIPについて研究を開始した。この研究の目的は、アメリカでは特定補助金に関しても、各州の多様な制度設計と運用が可能とするために非常に緩やかな枠組みの下で構築されていることを明らかにし、実際に各州が展開する多様な政策と実験室としての州の役割について検討する。この研究は2011年度も継続して行う。
|