研究概要 |
本研究ではわが国における所得再分配政策について定量分析を行うことを目的としている。研究成果の一つ目は「1990年代の世代間再分配政策の変遷-世代会計を用いた分析」(井堀利宏編『バブル/デフレ期の日本経済と経済政策5財政政策と社会保障』、内閣府経済社会総合研究所、第8章、pp.253-pp.275.)である。この研究では世代会計の手法を用いて時系列的に世代間の再分配について分析を行っている。推計結果からは90年代は一貫して将来世代に負担を先送りする分配政策が取られていたことが分かった。また、将来世代の負担の増加は人口推計の下方修正だけが問題ではないことも分かった。二つ目の研究成果は"The Optimal Size of Japan's Public Pensions: An Analysis Considering the Risk of Longevity and Volatility return on Assets"(Japan and the World Economy, Vol.22, No.1, pp.31-39.)である。この研究では不確実性を取り入れたシミュレーション分析に基づき、公的年金の最適な所得代替率、つまり最適な確定給付部分を分析した。結果は所得代替率20%から30%が最適であり、2004年の公的年金改革の際に提示された所得代替率50%より下回る水準が最適という結果となった。
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