本研究ではわが国における世代間再分配政策について世代会計の手法を用いて分析を行う。これまでの多くの世代会計を用いた研究は1時点での世代間格差の程度を分析し、また世代間格差を改善するためのシミュレーション分析を行うものであった。一方、本研究では1時点の世代間格差の分析ではなく時系列的な分析を行う。 推計結果は、90年代の行われた世代間再分配政策は20歳代を含めた現在世代の負担を軽くする一方で将来世代へ負担を先送りしていた。このような政策は2000年代の前半まで続くが、2000年代後半に変化する。現在世代の生涯純負担額は増加する一方で将来世代の生涯純負担額は低下した。しかし、それらは現在世代でも退職した世代ではなく若い世代の負担が重くなることで達成されたものであった。さらに、1992年から2002年の人口推計の下方修正は将来世代の生涯純負担額を32%近く上昇させる結果となった。
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