本年度は昨年度までに収集した日経500インデックスに含まれていた企業(金融業を除く)の社長・会長の出自(創業者、創業者との血縁ならびに姻戚関係)、取締役会構成(取締役人数、社外取締役人数)、社外取締役の属性、経営者の株式保有高(直接保有、間接保有)、株主構成に関するデータベースに加えて、東証1部上場企業約1500社(金融業に属する企業を除く)のデータベースの作成に取り組んだ。また、これらに加えて社外取締役に関する情報を収集した。社外取締役は株式の分散した上場企業における経営者と株主間のエージェンシー問題の緩和に役立つとされており、現在の会社法改正の議論でも注目されている。しかしながら、これまでの研究は米国の株式の分散が進み、専門経営者が経営を担っている企業を対象とした研究が中心であり、ファミリー企業におけるエージェンシー問題、すなわち少数株主と大規模に株式を保有する経営者間のエージェンシー問題の緩和に役立っているのかは不明な点が多い。特に日本の上場企業には、株式の分散した企業ばかりでなく、多くのファミリー企業が存在しており、昨今議論されている社外取締役が、創業者一族が経営・株式保有を通して強い影響力を持っているファミリー企業においてもエージェンシー問題を緩和しているのかを調査する必要がある。ファミリー企業における社外取締役の普及状況を調査したところ、非ファミリー企業の約6割が社外取締役を導入していたのに対して、ファミリー企業は約4割の企業しか社外取締役を導入していなかった。
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