金融市場には、現在の経済理論によってうまく説明ができていない「パズル」と呼ばれる現象が数多く見られる。代表的な例としては、Mehra and Prescott(1985)によって指摘された「エクイティプレミアム・パズル」を挙げることができる。「エクイティプレミアム・パズル」とは、現実に観察される平均実質株式リターンが短期安全金利より高すぎて、この差である「エクイティ・プレミアム」について経済理論がうまく説明できないというものである。この「エクイティ・プレミアム」に含まれると考えられる「ターム・プレミアム」に関しても、経済理論はうまく説明できていない。実は「ターム・プレミアム」に関するパズルが存在する。本研究はこの「ターム・プレミアム」に関するパズルを解くことを目的に研究を進めている。国債のターム・プレミアムとマクロ経済変数の関係を調べていくための前段階として、金利と日本のマクロ経済変数の間に安定的な関係性が存在するかどうかを検証する必要がある。そこで昨年度は、まず、公表されている長期国債の金利からクーポン効果を取り除いた、日本の複利のスポット・レートを使用し、金利と日本の実体経済の間の関係に安定的な関係が存在するのか、それとも構造変化がおこっているのかについて調べた。結果、関係性が変化している可能性が高いことがわかった。
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