金融市場には、現在の経済理論によってうまく説明ができていない「パズル」と呼ばれる現象が数多く見られる。代表的な例としては、Mehra and Prescott (1985)によって指摘された「エクイティプレミアム・パズル」を挙げることができる。「エクイティプレミアム・パズル」とは、現実に観察される平均実質株式リターンが短期安全金利より高すぎて、この差である「エクイティ・プレミアム」について経済理論がうまく説明できないというものである。この「エクイティ・プレミアム」に含まれると考えられる「ターム・プレミアム」に関しても、経済理論はうまく説明できていない。実は「ターム・プレミアム」に関するパズルが存在する。本研究はこの「ターム・プレミアム」に関するパズルを解くことを目的に研究を進めている。国債のターム・プレミアムとマクロ経済変数の関係を調べていくための前段階として、国債の長短金利差と将来の経済成長率の関係性および、各種政策ショックとの関係を調べた。1982年4月から1995年3月までの期間において、国債の長短金利差と将来の経済成長率に正の関係を確認できた。この関係が国債の長短金利差にどのような情報が含まれる結果もたらされているのかを調べるために、構造VARを用いて、金融政策ショックおよび他のショックを抽出し、分析した。長短金利差の変動と将来経済成長率との正の関係は、長短金利差に金融政策に関連するものと共に、他の要因(生産ショックなどを含む)に起因する情報が含まれるためであることがわかった。
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