金融市場には、現在の経済理論によってうまく説明ができていない「パズル」と呼ばれる現象が数多く見られる。代表的な例としては、Mehra and Prescott(1985)によって指摘された「エクイティプレミアム・パズル」を挙げることができる。「エクイティプレミアム・パズル」とは、現実に観察される平均実質株式リターンが短期安全金利より高すぎて、この差である「エクイティ・プレミアム」について経済理論がうまく説明できないというものである。この「エクイティ・プレミアム」に含まれると考えられる「ターム・プレミアム」に関しても、経済理論はうまく説明できていない。実は「ターム・プレミアム」に関するパズルが存在する。本研究はこの「ターム・プレミアム」に関するパズルを解くことを目的に研究を進めている。本年度の研究は大きく3つに分けることができる。第一に、平成22年度の研究で確認した日本経済の構造変化を考慮した上で、構造VARを用いて日本経済のマクロショックを識別した。第二に、長短金利差と将来の経済成長率との関係が、金融政策の情報によるものに由来するのか、それとも他の要因に由来するものであるかについて調べた。第三に、構造VARを用いて識別したマクロショックがターム・プレミアムを説明出来るかどうか検証した。結果、日本経済の構造変化によってターム・プレミアムへのマクロショックの説明力が変化していた可能性が示唆された。
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