本研究の目的は、国際社会を取り巻く環境が変化し、公共財の便益の波及形態が多様化している状況に鑑みて、伝統的に仮定されてきた公共財とは異なるタイプの公共財を想定し、グループの規模がその公共財の供給量にどのような影響を及ぼすのかを分析し、政策的な含意を得ることである。 研究計画にしたがい、本年度は、完全代替の特性を有しない公共財を明示的に取り込んだモデルにおける静学分析を推進した。特に、公共財から得られる効用に飽和点が存在する状況を想定し、グループの規模と完全代替の特性を有しない公共財の供給量との関係について分析を行い、グループの規模が拡大した場合に最適な公共財の供給が行われる条件について明らかにした。 また、本研究は、将来的な研究の方向性として、経済主体が長期的な視野のもとで意思決定を行う状況を考慮に入れた分析を行うことを計画している。本研究を今後の研究に発展させるため、本研究で着目している公共財の源泉に関する仮定を税競争理論に応用し、各国政府によって長期的な視点から意思決定が行われるモデルを構築し、各国政府の選択する公共財の源泉への課税方法によってもたらされる社会厚生への影響について考察を行った。 さらに、この成果を応用し、税競争を行う各国の政府によって目的関数が内生的に選択されるモデルを構築し、各国政府による目的関数の選択問題について考察した。これらの研究成果は、論文としてまとめられ、雑誌への掲載または学会における報告を通して発表された。
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