研究概要 |
本研究は、多様な大規模データベースから、現実の問題の解決に寄与するデータ項目を効率よく抽出し、それらを統合してモデル化するための基盤技術の創出を目指すものであり、このモデルの適用例として、不動産市場データに注目した。近年、投資家の情報の透明性の要望を受け、これまで困難とされてきた「取引価格」情報が一般に公開されつつある中、不動産鑑定士による「鑑定価格」情報とのかい離度を評価することにより、従来の「鑑定価格」情報を活かしつつ、これまでの不動産価格の時間的な構造変動を評価することができるようになる。さらに、対象物件の地理情報、物件を保有する企業の財務データや、各府省で管理されている政府統計データなど、価格付けに関連する項目を、あらゆる大規模データから抽出することで、より市況にあった不動産価格評価モデルを構築することを目指した。これにより、不動産を担保にした投資を行う際の、リスク評価の計測に活用することができるため、企業のデフォルト確率および回収率の推計において市場状況を考慮した評価ができるようになる。具体的には、J-REIT投資法人が所有する物件情報をもとに、どのような指標が価格決定に影響を与えているのかを様々な統計手法を用いて解析することで、市場の動向を探ってきた。信用リスク評価のためのアプローチとして、投資法人債を発行している法人に注目し、その市場価格データをもとに、倒産確率と回収率の推計を行うことで、信用リスクがどのように反映されているのかを明らかにしていった。J-REITデータにより解析した結果を踏まえて、大規模データでの価格評価関数の推定を進めるとともに、取引価格の構造変化をとらえるために状態空間モデルを適用した分析を進めていった。 これにより,中小企業の資金調達のためのストラクチャーの整備にも生かしていけるような指標づくりにつなげていけると考えている。
|