研究年度第1年目にあたる本年度は、研究の基礎的前提となる一次史料の収集及びデータの整備に重点をおきつつ、研究を進めた。史料収集については、当初の計画通り、19世紀後半~20世紀初頭のアメリカ国法銀行に関わる史料について、アメリカ国立公文書館及びアメリカ議会図書館で収集を進めた。一例をあげると、the fourth national bank of Philadelphia、the eighth national bank of New Yorkなどの国法銀行に対する通貨監督局(OCC)の検査報告書(Examiner's Report)とそれに関わる財務諸表・大口貸出先リストなどの経営史料、the pacific national bank of Bostonの経営陣と検査官との関連について詳細に記された行史レポートと同行の裁判記録などである。この作業によって、当時のアメリカ国法銀行の特徴や問題点を具体的に明らかにしつつ、それとの比較によって日本の近代的銀行業の形成における国際的特色を検討する研究基盤がある程度整った。日本側(国立銀行)の史料については、松坂屋名古屋本店、香川県立図書館などに所蔵されている銀行関係の史資料から、本研究に関連すると思われる箇所を収集した。特に、これまでほとんど研究されてこなかった、名古屋第十一国立銀行の草創期以来長期にわたる半季実際考課状が収集できた点は、日本における近代的銀行業の形成プロセスの解明につながるという意味で重要な成果である。一次史料以外の資料収集・整備も進め、並行して収集を終えた史料・資料のパソコンへのデータ入力も進めた。 さらに、本年度は史資料・データの分析にも着手することができ、その研究成果の一部については、下記項目11で記した論文及び学会報告において公表している。次年度は、史料収集を一層進めるとともに、蓄積しつつある史料・資料やデータ等に基づき、研究成果の公表にも注力していく予定である。
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