平成21年度は陶磁器業の側から碍子に接近したが、平成22年度は電力業の側から碍子への接近を行った。対象となる猪苗代水力電気の技術者であった太刀川平治の著作類を蒐集するとともに、猪苗代水力電気と並行する時期に同じ猪苗代湖での水力発電を企図していた田健治郎に着目し、その資料類の蒐集にもあたった。ただし、3月の調査においては、平成23年3月11日の東日本大震災およびその後の停電により、年度内における関東地方での資料調査が困難となってしまったため、平成23年度に繰り越して資料蒐集にあたった。 平成21年度に蒐集した資料の分析も同時に行ったが、その中で、絶縁体である碍子と一口にいっても、明治期から昭和期にかけて技術的にかなりの進歩をみせていることが分かった。この明治期から昭和期にかけては、日本における絶え間ざる国産化の背景に、海外でも碍子技術が発展していく時期であるという面白さがみられる。そのため、単純に碍子の国産化という命題につき進むのではなく、技術発展の度合いに応じた段階的な国産化を分析しなければならないと感じた。 碍子については、佐賀の香蘭社の事例については山田雄久氏が研究を進めており、その成果の一部が宮本又郎・粕谷誠編著の中に収録されたため、依頼をされた書評の執筆も行った。また、東濃の陶磁器業者である籠橋休兵衛家についての報告を経営史学会で行うとともに、後に『企業家研究』に論文を投稿・掲載された。
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