本年度は、(1)北海道江差、松前地域の資産家に関する史料収集、(2)北海道根室地域の資産家に関する史料収集、(3)近世・近代移行期における松前の資産家、場所請負商人伊達林右衛門家の経営動向についての分析を行った。 (1) については、伊達家と関川家(本家と分家)が該当する。これらについては、一応、平成22年度中に史料収集を完了した。ただし、関川本家に関しては、史料点数が10万点を超えるために、使用可能と判断した史料のみしか収集していない。それゆえ、今後の研究の進展状況によっては、再度、史料調査と収集を行う可能性がある。分家の関連史料はすべて収集を終えた。まずは、できるだけ早い時期に、分家のほうから研究に着手するつもりでいる。 (2) については、海産物商経営のほか、牧場経営、不動産経営、銀行経営といった事業に多角化していた関係上、海産物商経営に関する史料と牧場経営史料のごく一部の収集が終わったに過ぎない。したがって、平成22年度以降も継続して関連史料の収集にあたるつもりでいる。 (3) については、分析がほぼ終了している。冷害による不漁のほかに、ロシアの南下に伴う蝦夷地防備の必要性が生じたことに伴い、幕命で防備に入った秋田藩に、それまで幕府や松前藩に認められていた場所請負の独占権を否定され、秋田藩への過大な上納金負担のほか、同藩関係の流通ルートが新たに形成されたため、経営の衰退を余儀なくされたことなどを明らかにした。この成果は、2010年5月15日の経営史学会関東部会で報告することになっている。
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