本研究は戦前期日本の企業における技術的知識の創造過程を明らかにするもので、次の事実を確認した。(1)高等教育機関出身の技術系職員の職務は、人工物に関する定量的情報の創造や、現場の工員をマネジメントすることだった。前者が遂行される過程では、高等教育機関にて収得された、「仕方に関する知識」が活用された。(2)初等・中等教育機関出身の工員は、職務を通じた熟練により、技術系職員が創り出すことができなかった独自の技術的情報を創りだした。(3)戦前期日本の企業組織では、技術系職員と工員は、技術的知識創造の点で、互いに補完する関係にあった。
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