研究課題
今年度は最終年度でもあり、論考を提出予定であったが、研究準備が遅れ刊行することが出来なかった。2012年度にOxford University Press,から西村閑也先生が中心として編まれた研究書が刊行され、また慶応義塾大学出版会からも同先生が編まれた研究書が刊行される。いずれにも論文を書かせてもらっており、本研究課題である銀問題に接近する意味で国際銀行業の役割を描くことが出来た。国際銀行業が近代銀市場で果たした役割は未だ十分に解明されていない。上記2論文で十分に取り組めたとは言えないが、今後は研究期間内に収集した資料を分析して近代銀市場の発展について-側面だけでも描きたいと考えている。具体的にはイングランド銀行に所蔵されているロンドン金市場のファイルを分析する事と大英図書館・旧インド省文書館が所蔵するインド省がロンドン銀市場で実施したオペレーションを分析する事に取り組みたい。交付申請書にあるロンドン銀ブローカーの活動について調査したが、個別のアーカイブスに資料が残っておらず、従って大きな顧客であったインド省からの接近が最も実像に迫る方法と判断した。あとロスチャイルドのアーカイブスにも調査に赴いたが、こちらは未整理の膨大な資料群があるものの、今回の研究期間で十二分に取り組めそうもなかったので、次の調査に持ち越した。インドや上海の資料も存在するものの、未だ全体像が把握できておらず、取り組むことが出来なかった。近年はオーストラリアとアメリカ合衆国における接収資料の公開が進んでおり、とくにアメリカ合衆国における国際銀行(ここでは横浜正金銀行)の銀取引について、僅かながら一次資料があると思われる。今後の課題として考えている。
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Discussion Paper, ICES Hosei University
巻: No.12-J-001 ページ: 65-74