本研究の目的は、不祥事を起こした地域企業が信頼回復を果たす要因を考察することである。本年度の定量・定性調査の結果では、消費者の立場からは不祥事を起こした企業に対する評価は地域貢献だけではないことが示唆された。 A社に関する定性調査では、A社の事件発生から3日間のポジディブワードで抽出された1034件のブログ記事の分析を行うと、商品に関する評価(商品評価)が多くを占めていることが分かった。また同様にB社のブログ記事の分析を行うと、A社と同様に商品評価に関する記事が多く書き込まれていた。このように消費者が自発的に書き込まれたブログ記事によれば、商品に対する愛着や食べたい、残してほしいなどの商品への評価まずは多く書き込まれていることが分かる。このことは商品力を高め、顧客ブランド・ロイヤルティを高めておくことが有効であることを示唆している。 また、定量的調査結果を元にした重回帰分析の結果も同様な結果を示唆している。A社に関する分析結果では、信頼回復評価に与える要因としては「商品力」に関するものが大きな影響を与えており、次に「手続き的公正」「相互作用的公正」が続いた。またB社に関する分析結果も同様に「商品力」に関するものが大きな影響を与えていた。 消費者の視点ではまずは商品力に関するものが信頼回復に大きな影響を与える可能性が示唆されている。常時から顧客ロイヤルティを高めておくことが、万が一の場合に発生する不祥事から信頼を回復するためには重要なことである。企業は不祥事への対応策を考える上でも顧客のブランド・ロイヤルティをどのように創造するのかの戦略が求められるのである。 また、本研究の結果は、日本広報学会、日本広告学会で報告された。
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