本研究は、半導体レーザー技術開発における日米のエンジニアの研究ネットワークとイノベーションの関係を歴史的に量的、質的、双方から分析することを目的としている。具体的には、アメリカのApplied Physics Lettersに掲載された共著論文を40年にわたり統計的に分析している。共著論文と論文の引用数を用い、ネットワークの中心性とブレークスルーの関係を日米で比較している。次に、この量的データによるネットワークとブレークスルーの関係をより綿密に分析するために、インタビューによる質的な分析を行っている。 平成22年度は、これまでに蓄積したApplied Physics Lettersのデータベースを基にネットワークの分析を進めるとともに、これまでの研究によって特定した国内外のキー・サイエンティストへのインタビューを行った。これまでのインタビューは79件行っている。これらのインタビューによって、特許や論文のデータにでてこないサイエンティストとエンジニアのネットワークの日米の違い、時期による違いが徐々に明らかになってきている。具体的には、1980年代から大きく日米のネットワークの量的な広がりに違いが生まれていたことが明らかになってきており、そのネットワークの違いと日米で生み出されるイノベーションの違いの間に大きな関係があることが分かってきた。 また、平成22年度は、研究の中間報告として、Business History Conferenceで発表するとともに、Business History、Australian Economic History Reviewなどに投稿し、査読付き論文として発表した。研究発表や論文投稿の際に、今後の研究の方向性についていくつかの重要な指摘や示唆が得られた。これらをもとに平成23年度には研究をまとめていく計画である。
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