本研究では、半導体レーザー技術開発における日米のエンジニアの研究ネットワークとイノベーションの関係を歴史的に量的、質的、双方から分析した。 本研究は日米におけるネットワーク形成とイノベーションや科学的プレークスルーの出現のパターンの違いを明らかにすることによって、ネットワークとイノベーションの関係についての理解をより深めることを目的とする。「ネットワークがあれば科学的ブレークスルーやイノベーションが促進される」という単純な関係を想定せずに、ネットワークへの参加者やブレークスルーやイノベーションの性質を理解することを目的とした。 アメリカのApplied Physics Lettersに掲載された共著論文を40年にわたり統計的に分析した。共著論文と論文の引用数を用い、ネットワークの中心性とブレークスルーの関係を日米で比較した。また、この量的データによるネットワークとブレークスルーの関係をより綿密に分析するために、インタビューによる質的な分析を行った。 半導体レーザーにおける日米の研究ネットワークとイノベーションの関係の比較分析を行った。アメリカはネットワークが大きく発展し、イノベーションはネットワークから生み出されていた一方で、日本のネットワークは小さく、イノベーションへの寄与も大きくなかったことが分かった。また、ネットワークは、レーザーのサブマーケットの創造に大きく寄与していた一方で、要素技術のイノベーションの創出に関しては阻害要因となっていたことも明らかになった。
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