新卒の大卒就職者の早期離職行動の構造を捉えるために、平成21年度は以下の3尺度の開発に取り組んだ。その尺度とは、第一に「組織人としての資質」尺度、第二に「入社するにあたっての潜在的不安」尺度、第三に「内定先企業のイメージ」尺度である。以下では、これらの尺度と早期離職行動との間に想定される関係について説明することで、これらの尺度開発の意義について述べたい。まず「組織人としての資質」尺度について、これは特に新入社員の早期離職行動が、組織のなかで働くこと自体に対する不適応と関係しているのではないかとの仮説に基づいている。本年度は先行研究などの文献調査を通じて、「組織人としての資質」の下位尺度として「チームプレー」「問題対処」「ルール運用」の3尺度を開発した。次に「入社にあたっての潜在的不安」尺度について、これは早期離職行動が入社後の職場状況や労働条件だけではなく、入社前の学生時代の就職活動の成否や、社会人になるにあたっての潜在的な不安などからも説明できるのではないかとの仮説に基づいている。特に学生時代の就職活動に対する「やり残し感」や今後従事することになる仕事への不安感などが、早期離職行動とどのような関係にあるかの関係を試みるべく尺度開発を行った。最後に、「内定先企業のイメージ」尺度について、これは入社前と入社後の企業に対するイメージギャップが、早期離職行動に影響を及ぼしているのではないかとの仮説に基づくものである。具体的には、調査対象者に内定(および入社)企業のイメージを自由記述してもらい、テキストマイニングの分析手法により解析する予定である。そのため、その分析手法の学習と習得に本年度は取り組んだ。以上、平成21年度は調査実施に備えて、尺度開発を行い分析手法の習得に取り組んだ。
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