まず、「自動車産業に関する理論的文献」、特に製品開発やサプライヤー・システム、戦略的提携を主題にした先行研究のサーベイを行った。特に、いわゆる生産系列論を整理することによって、本研究の分析枠組みを構築した。また、平成21年度では、自動車企業2社、自動車部品メーカー5社に対して、聞き取りを行った。独立系自動車部品メーカーでは、1社の購買担当者にヒアリングを実施した。独立系部品メーカーがいかに顧客である自動車メーカーとの関係性を構築しているかについて、定性的データを得た。また、系列的な部品メーカー(特定の自動車メーカーと強い関係性を持つメーカー)の研究者・開発者・購買販売担当者にヒアリングを実施した。系列的な部品メーカーは、自動車メーカーとの関係性を維持しつつ、競合他社とは異なる競争優位を構築しなければならない。したがって、関係性構築戦略の実態を知ることができる。ヒアリングの成果は、先の独立系部品メーカーの調査と併せて、事例研究として学会で発表して論文にまとめていく予定である。 さらに、自動車メーカーの拠点周辺に部品メーカーが位置することは少なくない。研究開発拠点における地理的近接性は、コミュニケーションの有効性を高めると言われている。しかしながら、パワーに格差がある場合には、かえって有効性が低くなる可能性がある。この現象については、「コロケーションの逆機能」として自動車企業内の事例を学会で報告した。
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