本研究の目的は、自動車部品メーカーの取引戦略を、自動車メーカーとの構築と組織能力構築の2つの視点から明らかにするものである。 まず、取引のオープン化に関する影響を考えるため、オープン・イノベーションの文献をレビューした。先行研究の知見から、日本の自動車産業において、特定の自動車メーカーと部品メーカーの間では、特殊なオーブン性が成立している可能性があることが分かった。文献レビューの成果は、研究技術計画学会の学科誌『研究技術計画』において、「オープン・イノベーションの諸相-文献サーベイ-」として公表した。 次に・トヨタ自動車のサプライヤー組織である協豊会に注目し、自動車部品メーカーがいかに自動車メーカー(トヨタ)との間で強い関係性を築いているか考察するため、トヨタ及び部品メーカーに聞き取り調査を実施した。その結果、トヨタは協豊会を組織して部品メーカーを管理しながらも、部品メーカーの自律性を保証するような仕組みを構築していることが明らかになった。さらに、テーマ部会に代表される協豊会活動を通じて、部品メーカー同士が協力して課題に取り組み、その成果をトヨタと部品メーカーで共有することにより、各々の企業の組織能力を高めあっているという仮説も構築することができた。これらの知見及び考察については、2010年6月に開催された組織学会において「協力会組織における会員企業め自主性管理メカニズム」という論題で報告した。
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