研究概要 |
これまで,日本においては,ビジネスプロセスにおけるIT・情報システムの導入効果を定量的に分析する研究はほとんど見当たらなかった。これに対して,本研究は,IT・情報システム導入案の検討,ビジネスプロセスの設計,最適化,構築,そして実装などの諸段階において,実際の企業における業務や情報システムを対象に,マネジメントの視点から,シミュレーションの活用の可能性を研究し,提唱した。 本研究は当初の研究目的を達成させるために,実証研究として,ある日用品製造販売企業とある機械設備製造販売企業などの実際の企業対象に,研究を展開していた。実証的観点から,定性的分析のほか,定量的分析をも加える問題解決のアプローチが,企業のビジネスプロセス管理における意思決定をより効果的に支援することを確認した。 平成22年度の研究アプローチは21年度の研究方法を踏襲したが,研究論文の質を保つために,論文の執筆と修正に余裕のある時間配分に配慮した。対象企業を調査し,現状(AS-IS)のBPSモデルを構築した。現状に対する分析の結果に基づき,改革案適用した場合(TO-BE)のBPSモデルを構築し,改善案について分析・提案した。本研究では,コンピュータベースのシミュレーション技法(BPS)を導入することで,要員配置やビジネスプロセス変革後の効果を前もって定量的かつ可視化して予測・分析することが可能となった。また,リスクマネジメントの一環として,BPS技法は事業継続計画にも非常に役立つことを確認できた。研究の結果を4つの論文にそれぞれまとめて,学会や国際シンポジウムの場で発表し,評価された。
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