本研究は,様々な生産システムをもつ企業の実態調査やインタビューを基礎として,生産システムと作業者の行動規範,業績評価法の適合関係について解明することを目的としていた。そのために,可能な限り多くの工場視察,インタビューを行って情報収集するように努めた。本年度は,デンソー大安事業所の高度にオートメーション化されたフローショップ型生産の視察,ヤマハ磐田製作所における熟練技能者による加工を中心とする管弦打楽器製造工場の視察,新東工業における受注生産による工作機械製造,王子ネピア名古屋工場における資本集約型の製紙工程・ティッシュの製造工程の視察,トヨタ車体の自動車組み立て工程の視察を行った。視察したこれらの工場に加え,ヤマハ発動機,ヤマハリビングテック,豊田自動織機,アイシン精機,大豊工業,コニカミノルタなどについての情報収集も行った。また,このようにして得られた情報を概念モデル,さらには数理モデルとして表現するために,関連する文献のレビューや統計分析を中心とする数学の勉強会,小規模な研究会を通じた意見交換などを行った。 これらの成果については,未だ不完全な点が残されており,学会発表や論文発表をする段階に達していないが,できる限り早く調査結果をとりまとめ,学会等で発表したいと考えている。 その他の活動として,2011年度に出版した『詳解コストマネジメント』(同文舘)の内容について,日本能率協会主催の生産技術革新マネジメント研究会,生産革新総合大会などで発表する機会を得て,実務家からコメントや評価を頂いた。工学と会計学を融合するという試みに対して好意的な評価を多く頂いた反面,説明が不十分な点や誤解,さらに追加すべき情報についての指摘を受けた。
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