研究概要 |
本年度は,当科研の最終年度ということもあり,これまでに行ってきた研究の成果を公表した。まず,全社的リスクマネジメントの理論・実証に関する研究として,ERMが企業価値に正の影響を及ぼしうることを理論的に検討し,実際にERMを導入している企業の中でも特に役員の積極的な関与が見られる企業においてそうした傾向が見られることを示した。本成果は,「ERMと企業価値」というタイトルで『甲南経営研究』に公表した。 また,本科研はERMと内部統制に関する分析も目的としている。そこで,本年度では,内部統制が企業価値にどのような影響を及ぼしているのかについて研究を行った。具体的には2009年度より開始された内部統制報告制度を題材として,内部統制に重要な欠陥がある企業と公表した企業にたいして,株式市場はより高いリスク・プレミアムを上乗せしていることを示した。本成果は「内部統制報告および監査と株式市場の評価」というタイトルで査読誌『経営財務研究』に投稿しており,現在1回目の校正を行っている段階である。 また,本年度は,未曾有の被害となった東日本大震災の発生を受け,本震災が損保会社の企業価値に与える影響に関する研究を行った。当成果は"The Effect of the Great East Japan Earthquake on the Stock Prices of Non-Life Insurance Companies"というタイトルで"The Geneva Papers on Risk and Isurance-Issues and Practiceに投稿中であり,現在1回目の校正を行っている。加えて,台風の上陸が損保会社の企業価値に与える影響に開する研究も行い,"The Effect of Typhoon Landfalls on the Japanese Non-life Insurers"というタイトルでDiscussion Paperに登録した。当論文も最終チェックを行い次第,海外査読ジャーナルに投稿する予定である。
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