平成22年度は、報酬管理と業績管理を中心としたグローバルな人事制度の枠組みに関する理解を深めるための文献レビューを継続すると共に、これまでの調査から得られた知見を発展させるために各種研究会への積極的な参加と研究発表を行った。具体的には、日米企業における国別の特性を持った本国制度の特徴が、人的資源管理のグローバル展開に際してどのような課題や問題に直面するのかという視点から、各方面の専門家、人事担当者、労働組合役員、等とのディスカッションを重ねた。また、グローバルな報酬管理において重要となる外部労働市場の影響を受けた賃金決定と組織内的な業績管理の理論的関係について考察を深め、関連成果として論文に取りまとめている。そこでは、賃金決定において市場の論理と組織の論理からもたらされるコンフリクトに着目した分析を行っており、次年度の早い段階での刊行を予定している。 また、上記の作業と同時進行で企業へのインタビュー調査を進めた。米国企業への接触はさしあたり限定的であるが、国内では電機産業に加えて自動車産業への調査可能性が開かれたため、グローバル人事制度の業種間比較も視野に入れて鋭意調査を進展させている。なお、これまでのところ調査機会は複数の企業や部門に分散する傾向にあり、事実発見を系統的に整理構成する段階までは至っていない。しかし、各社人事部への接触をつうじて来年度にはいくつかの主要大企業で調査のさらなる進展が見込まれる状況を整えている。
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